MERCHANDISE

2022-02-03

インディーズレコードレーベルのマーチャンダイズにはファンの心をくすぐる良いデザインの物が多い。音楽やカバーアートに触れてこころが動き、映像やライブを観ることでイメージが広がり、大好きなアーティストのグッズを手にすることで繫りを感じる。そんなサイクルは音楽ファンなら自然の成り行きで、多くのひとにも経験があると思います。世界中には大小様々な音楽レーベルがありますが、一癖も二癖もある音楽をリリースしつづけるインディーズレーベル。それも20年近く最前線でとなるとそんなには多くはないだろうと思います。Stones Throw Records はそんなレーベルのひとつです。

1996年にPenut Butter Wolf  のアーティスト名で知られるChris ManakによってLAにて設立されました。レーベルアーティストには、Madlib、JDilla、そして 2020年に逝去されたMF DOOMなどの2000年代初頭のアンダーグラウンドヒップホップシーンを席巻した才能が並び、2010年代にはビートシーンを沸かせた、Dam-Funk、Jonti、Jonwayne、Mndsgn、SamiyamなどのLA在住の個性派アーティストから、近年のインディーポップシーンを牽引するWashedOutやBennySingsなど、錚々たる才能の数々を送り出してきました。

HIPHOPレーベルとして名を馳せた後も、ファンクからLO-FI、サイケデリックな実験音楽を、まさにインディペンデントに世にリリースしてゆき、世界中の真の音楽ファンを沸かせ熱狂的に支持されています。
レーベルの『自分たちが聞きたい良い音楽しかリリースしない』という哲学が、メジャーレーベルのマーケティング主導の音楽ビジネスに一矢も二矢も報いてきました。2013年のドキュメンタリー映画『Our Vinyl Weighs a Ton:This is Stones Throw Records』で彼らの活動がまとめられているので、気になる方はチェックしてみてください。

そして、とても興味深いレーベルの誕生ヒストリーがウェブサイトに掲載されています。よくあるとってつけたような内容ではなく、とても個人的な人の思いが伝わる内容が書かれていて、そこには、世界中に共通する個性的なモノが存在するさまざまな理由を垣間見ることができます。特に最初のリリースは亡くなった親友との作品をリリースするための弔いにも似た個人的な動機だったことが書かれていて、スタイリッシュで明るいレーベルのイメージからはすこし距離のある人間臭さが垣間見られ、彼らの音楽へのスタンスが普遍的な人間感情に向いている理由がよく理解できます。

ひとりのStoneThrowRecordsファンとして、音楽はもとより、彼らのマーチャンダイズのなかでとても記憶に残るモノが過去にありました。『 J DILLA CHANGED MY LIFE』(J DILLAは人生を変えた)という3段組のサンセリフで組まれたメッセージTシャツです。2006年32歳の若さで逝去されたJDillaの影響力をシンプルな一言でいい表したメッセージには影響を受けた多くのファン達の共感をよせるものがあります。そして元々のデザインの逸話がウェブサイトに掲載されていて、病状が悪化していたJDillaの最後のヨーロッパツアーの客席で、病魔と戦う彼への敬意と応援の気持ちをつたえるために一人のファンがこの手作りのメッセージTシャツを身につけていたのをJDilla本人が感銘を受けたことから誕生したそうです。多くの音楽を残し世界中に影響を与えたアーティストへの弔いの気持ちをスタイルと共に共有することができる。そんな心の繋がりを様々な方法でもつことはとても良いことのように感じています。

インディペンデントなレコードレーベールの多くは、楽曲の作成からライブ、アーティストのプロモーションまで、地道な努力で行いながら、音楽的な自由やスタイルの自由をとても大事に活動しています。その中でも、デザインやイメージは世界感を伝えるためにとても重要なファクターとなり、大手のメディアを通さず直接ファンに届く、ウェブサイトやマーチャンダイズがファンとアーティストの絆を固く結びつけます。彼らの楽曲は様々な配信サービスで聞くことができ、レコードやグッズなども オンラインを通じて購入することができます。ぜひ彼らの世界感に触れてみてください。

TEXT by Yaha Hayashi