ACEHOTELはシアトル・ポートランド・NY・LA などで展開しているアメリカのホテルチェーンです。徐々に海外にも進出をはじめ2021年に日本の京都にもオープンしました。2000年代初頭にクリエイティブな発想の転換でデザインホテルの概念を大きく変え、突如としてホテル業界の寵児となり、その後に誕生したデザインホテルに多くの影響をあたえ続けています。
ご存知無い方に簡単に説明をすると、来歴としては、今流行のバーバースタイルのリバイバルの一因ともなった、Rudy’s Barbershopという理髪店の生みの親、アレックス・カルダーウッドAlex Calderwoodが友人たちとともにシアトルで一件のホテルをはじめたのが1999年。それは、見事な発想の転換でハーフウェアハウスと呼ばれる、更生施設の様なうらぶれた安宿施設をリノベーションしてクリエイティブ層へ向けたホテルにつくり変えたところから始まります。いわゆるヒップカルチャーが大きなビジネスに転換してゆくのと時を同じくしていました。
2000年代初頭のアメリカの若者中心のカウンターカルチャーはヒップスタ文化とも呼ばれ、拝金主義や行き過ぎたテクノロジーや経済合理主義へのカウンターとして、サカスティックに既存の価値観に対する天邪鬼な態度を表現するために、昔のものをディグする懐古的な趣向やオールドスクールのタトゥー、バーバースタイルなどの髪型がリバイバルし流行の先端になっていました。NYのウィリアムズバーグをはじめ、SFのミッション、シアトルのキャピトルヒルやポートランドのパール地区が文化の発信の地であり、そういった文化と共鳴してACEHOTELはヒップホテルの代表格となりました。企業広告に踊らされるような生き方から距離をとり、新旧とわず土地やモノや文化から人間的な価値を見出し、新たな価値をつくりだす。そういったクリエイティブなマインドの大きな成功例として知られるところになりました。
2010年代以降は、ホテルチェーンとして様々な場所に出店して初期の感じからは変わりましたが、いい意味でスケール感に対して洗練されすぎることのないとても面白いバランス感覚でブランディングされている企業だと思います。ホテルの部屋には、グラフィックアーティストのアートが壁面に描かれているなど、モダンなビジュアルデザインにはとても強い印象があり、グッズのラインナップはTシャツ、キャップ、トートからステッカーなどのマーチの王道から、ホテルらしいバスローブや、レコードプレーヤーのスリップマットなど、とてもカジュアルでかつ主張し過ぎないセンスの良いグラフィックで「いま」のバランスを表現しているデザインが印象的です。